「主張」と「責任」から見る人物評価

Editorial (オピニオン)
国連記者室
出典 ウィーン発 『コンフィデンシャル』
2012年10月20日
許可を得て複製

当方は若い時に日本を後にし、欧州に住みだしたせいか、 いわゆる日本の戦争文学や歴史小説を読む機会がまったくなかった。ところが、 帰国していた知人が日本から買ってきた本をたまたま借りることができた。書名は大岡昇平の「ながい旅」(角川文庫)だ 。

 

第二次大戦敗戦後、B級戦犯となった東海軍管区司令官の岡田資中将は軍事裁判で、 空爆を行ったB29米軍搭乗機の捕虜を軍律会議を開かずに処刑した責任を全て一身に背負うと表明する一方、 米軍の日本への無差別空爆は国際法違反だと主張し、米国の戦争犯罪を追求した人物だ。

作家大岡は復員後、日本軍の実態を厳しく批判する作品を多く発表したが、この作品の中では、 言うべきことを主張する一方、配下たちに罪が及ばないように全ての責任を負うと述べた岡田中将の人格にほれ込んでいる 。

そこで、「主張」と「責任」の一貫性という観点から、4つの人物評価を考えてみた。

  1. 言うべきことを主張するが、同時にその責任を背負う人間
  2. 言うべきことを主張するが、その責任は取らない人間
     
  3. 言うべきことを主張しないが、その責任を取る人間
     
  4. 言うべきことを主張せず、同時に、その責任も取らない人間

  1. の人間は岡田中将のような人物だ。「信念の人」だ。
     
  2. の人間は残念ながら指導者層に多い。卑怯者だ。
     
  3. の人間は聖人か「お馬鹿さん」だ。
     
  4. の人間は数的には最も多い。存在しているだけだ。

以上、分かりやすくするためにシンプルな人物評価を下してみた。あなたはどのタイプの人間ですか。一度、 考えてみてください。

1.のタイプは言行一致型だから「信頼される人間」だが、数的には限られている。「責任を背負う」という点からいえば、 日本では 3.のタイプが多いのではないか。上司や高位者に対して自身の考えを主張しないが、問題が生じた場合、その責任を密かに(止む得ず)受け入れる人間だ。日本では同タイプが美化されたり、同情されるケースが少なくない。日本は「物言えば唇寒し」的文化だ。「主張する人間」が尊敬されることは少ない。 責任を取らないタイプの 2. と 4. は社会の多数派だ。社会が「無責任時代」となるのは統計的に見て当然の結果だろう。

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